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2014年3月5日(水曜日)

入学試験と人間とIT・AIの能力 その1

25,26日と京大の入試で監督。27日にIPAで社会とITの関係について講演。3日もハードな仕事が続き大変だったが、お蔭で2つ、思いがけない収穫を得た。それを忘れないように記録。長くなるので、幾つかの投稿に分割。ひとつは社会におけるITの複雑性、もう一つは、SMART-GSの様なデジタル・ヒューマニティ―の地震学・火山学への応用の可能性。

IPAの講演では、ITがなぜ「社会的に複雑」かを説明したくて、講演開催の担当者の方には悪いのだが、資料送付のデッドラインを無視して、色々考えていた。

で、いつものことながら、悟りは足下にあり! :hammer:

僕は年齢の関係で試験監督の室長の仕事が毎年のように来る。監督の要領は毎年微妙に変わるので、試験の前日に細部を舐めるように分析しておくのだが、いつもアナウンスする「時計」についてのアナウンスで面白いことに気が付いた。

室長マニュアルに従い、「机の上に置いてよいのは、黒鉛筆、シャーブペン、…時計、ただし、計時機能のみのものに限ります、…」というような意味のことをアナウンスすることになっている(要領はIDがついていて、試験後に回収されるので記憶によるもの)

これを見て、NIIで新井紀子さんをリーダーとしてやっている「東ロボ君」のことを思い出す。このプロジェクト、社会とITの関係を考えるときに大変に示唆的で面白いのだが、「東大に合格」ということの意味を定義せずに進んでいるようで、果たして、やっている人は、「入学試験」というものの社会的複雑性・社会関係性に気が付いているかどうか、もしかして、FGCSの時と同じように(注)、それを無視して単純に技術としてやっているのではないか、それが後で社会から叩かれる原因になるのではと気になっていたのだが、京大の入試におけるルールが、上手く、その疑念・心配を表す例になりそうだと気が付く。そうだと、IPAでの講演で使えるわけだ(実際に使った)。

東ロボ君プロジェクトのモデルになったのは、明らかにIBMのWatson projectだろうが、この際にも「コンピュータは回答するためのボタンを押すという行為を電子的にできる。人間は力学的にそれをしないといけない。これは人間に不利で不公平だ」という objection がでた。

つまり、「TVのクイズ番組、 Final Jeopardy でコンピュータが人間のチャンピオンに勝利する」という目的の意味が、どこにあるのか、例えば、本当に全く同じ条件、つまり、コンピュータにも「腕」があって、それで回答用のボタンを叩くという条件を課すべきか、というよう問題が生じたわけである。(こちら参照)

この例を元にすれば「東大の入試において人工知能が合格する」という東ロボ君プロジェクトのゴールの意味が、非常に不明瞭になることがわかる。プロジェクトメンバーの方たちは、ロボットが他の受験生と机を並べて、つまり、人間と同じ条件で、受験するのではありません、ということを繰り返し述べられている。IT関係者のひとりとしては、僕も、これはそれで良いと思うが、NHKで、このプロジェクトをモデルにした寸劇をやっているなかでは、実際にアンドロイドが合格して、学生と一緒に講義にでているということになっていた。いくら説明しても、社会は、そういう風に取る傾向が強いだろうから、十分な説明が必要だし、「人工知能が○○に合格する」という言葉の意味を詳しく定義しておかないと、注に書いたようなFGCSでの過ちを繰りかすことになりかねない。

で、最初は僕は「人工知能が○○に合格する」の意味のある定義はできるかもしれないと思っていたのだが、この時計についてのアナウンスを手がかりに分析を続けたら、入学試験というものは、Final Jeopardy の様な「人工的にシンプルに設定された」クイズ番組と異なり、実に社会的に複雑で、社会が納得する合理的な定義が不可能そうだと思うようなった。

この「人工知能が○○に合格する」というフレーズは、「ITがらみのことが、社会的になりがちで、しかも、そのために、それは非常に複雑で、社会的に統一した判断を下すことが難しい場合が多い、そのためにITの、特に SIer 系、エンタープライズ系のプロジェクトは困難に陥ることが多い」という、僕が日頃主張している意見を、非常にうまく説明していることに気が付いたわけである。

で、これを、4月から京大思修館(現同志社ビジネス・スクール)教授になる山口栄一さんに依頼されている、イノベーション関係の本の第2章(1章は一橋の中馬さん)に使うことにし、さらに分析を続けていったら、面白いことに、入試第一日目に、まさに、ドンピシャの問題が出題されていた。で、その内容を忘れないように、ここに書いている。

長くなったので、続きは、別の投稿…

注:通産省のFGCS(第5世代コンピュータ)プロジェクトが成功したか失敗したかは意見が分かれている。以前調べたら通産省を継いだ経産省関係では成功したとされているらしいが、総務省の研究会の資料などでは失敗と書かれていたりする。プロジェクトメンバーが困るほど持ち上げたマスコミは一斉に「失敗」と書き立てた。僕は最初からマスコミが書くような目的は達成できないと思っていたが、当時の若手人材が世界のトップレベルの研究者と日常的に交流できる場をつくり、それにより、日本のITの世界を世界レベルに持ち上げる効果は絶大だった。戦闘機を何台か買うと飛んでしまう位の金額を、10年間、そういう学術に投入するのは決して高くない、とプロジェクト当時から言っていたし、マスコミが失敗と言うようになっても、僕は成功と言い続けていた。多分、そのことがあって、プロジェクトのリーダー、渕一博さんが亡くなって1年後の追悼集会で基調講演を依頼されたのが、今度は歴史家として発言しないといけないので、色々史料を集めて、分析したところ、「これは失敗という他ない」という意外な結論に到達した。その理由は、WIKIPEDIA(2014/3/5)にファイゲンバウムの評価として書かれたこの文章と同じ趣旨:

第5世代は、一般市場向けの応用がなく、失敗に終わった。金をかけてパーティを開いたが、客が誰も来なかったようなもので、日本のメーカはこのプロジェクトを受け入れなかった。技術面では本当に成功したのに、画期的な応用を創造しなかったからだ。

これはプロジェクト後の評価だが、実は、ほぼ同じ結末が、プロジェクト前に、ヴィノグラードさんの1986. Understanding Computers and Cognition: A New Foundation for Design (with Fernando Flores) で予見されている。ただし、この二人の研究者の意見(それは僕の初期の意見でもある)と、一般社会の意見が分かれるのは、ハードウェアはできたので成功、という判断だろう。社会の場合は、ハードができても、それが使われなかったら失敗とみなされる。

そのハードの話は別として、なぜ、FGCSは失敗とみなされるべきだったのか。日本のIT研究力を底上げする効果は絶大だった。また、確かに並列の論理プログラミングベースのプラットフォームは、あまりに巨大ながら一応完成した。マスコミが書き立てないプロジェクトならば、これ位の費用(一年に約60億円)でも、それほど非難されなかったはずだが、問題は、FGCSが社会に強くアピールしていた点だ。FGCSのキックアップの集会では、社会的にこういう効果が生まれるという、生み出すべき成果が、数多くうたわれていたのである。また、当時のFGCSの社会的な扱いには、すごいものがあり、渕さんは世界的有名人になった感があった。つまり、FGCSは、社会的アプリケーションの可能性を見せることにより、明らかに、社会的な後押しを得ていた。それが望んでの事か、望まなくての事かは、別として、確かに存在したそれを利用していたことは、集めた資料から明らかだったのである。これに気が付いたところで、愕然としたが、歴史研究者としては意見を変えざるを得なかった。しかし、昔の知人たちには悪いので、失敗だったと明瞭に言うが、でも「さりげなく言う」ことにして、基調講演で「失敗」と言った。なるべくさりげなく言ったためか、古川さんたちの旧メンバーの大半からは反発はなかったが、ある中心メンバーからは、非常に強い反発が来た。彼の言い方では、渕さんが実現すると言っていたプラットフォームは確かにできたのだから、成功だというのである。もちろん、そのころ若くて、プロジェクトの立ち上げメンバーでさえなかった彼にFGCS/通産省の約束の責任を押し付けることはできないのだが、しかし、その約束による社会的恩恵を受け続けた組織の中心的位置にいた以上、その責任を引き受けたことになるので、社会的意味では失敗とされることを引き受けなくてはならないと僕はおもう。ここの意見は、分かれたままで、議論の結論はでなかった。


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