「情報技術の現代史」メモ 2019.05.09

質問票への回答のための資料

  1. 前回、質問票を提出しながら、受講者名簿に掲載がない人が二名いました。単位と関係なく受講したいのでしたら、全く構いませんが、そうでないのならば履修登録を忘れていないか確認してください。
  2. HDDを開けるためのドライバ:トルクスドライバーT8
  3. Amazon の裏側をもっと知りたいという人のために:
  4. 中国の Alibaba(阿里巴巴集団)や Taobao (淘宝網)とアマゾの違いは?

前回の資料

Amazon FC というマシンと人間の関係を分析する

ピッカーという人間部品

ピッカーの役割

Amazon FCは人間を「ヘッド」として使う巨大ハードディスク :ピッカーの自然な認識を封じ部品化するための1フィートルール

次に、この様な「人間を部品とするマシン」とする「分業」というアイデアが、アダム・スミスの「国富論」に現れ、それがコンピュータのパイオニアといわえる19世紀英国ビクトリア王朝時代の、万能学者チャールズ・バベッジにより、「格差を利用して設けるマシン」の原理に変えられ、かつ、バベッジが、それをコンピュータと関連付けて考えていたことを、歴史史料を使ってみる。

アマゾンは無人化を目指している?

アマゾンは、すでに一部の倉庫を大幅にロボット化しており、日本でも、川崎FCを始めとして茨木などにロボット化FCができたことは既に話した。この秋には、京都府初の京田辺FCが稼働を開始する予定だが、これもロボット化FCである。

アマゾンの理想は、無人化FCであるらしい。このアマゾンのロボット研究者へのインタビューでの

「どちらかというと「協働」を実現したいと思っています。今回の競技を見ていただいてもわかる通り、完全自動化までの道のりはまだまだ遠いのです。」

という発言に注意。これは完全自動化なのか、人間と機械の協働なのか、と問われての答。

「まだまだ遠い」ということは、その遠い目標を目指しているということ。

つまり、アマゾンの目標は、FCの完全自動化、完全無人化。

ちなみに、上のロボット研究者の発言は、2017年に日本で開催されたアマゾン・ロボティクス・チャレンジという無人化ピッキング技術のコンテストでのインタビューでのこと。

この競技会が、2018年にはキャンセルされている。おそらく、このことは今の段階では、完全自動化のための技術が十分育ってないとAmazonが判断していると思われる。

その一方で、茨木FCや京田辺FCの様に、大量のロボットを導入して、大幅にピッカーの数を減らしたFCが続々と建設されていることは、完全な無人化は無理でも、大幅な省人化のための自動化技術が実用化されていることを意味している。

分業と自動化

このアマゾンのピッカーが象徴としているのが、アダム・スミスに始まるとされることが多い近代資本主義の生産様式の象徴ともいえる「分業」の概念。(参考「世界史の窓*、「池上彰のやさしい経済学」)

そのアダム・スミス(国富論、1776年出版)の、およそ60年後、同じ大英帝国のチャールズ・バベッジが、さらなるスミスの分業論を進化させたと主張した新たな分業論を、その著

On the Economy of Machinery and Manufactures 1832

で発表。

この著書で、「機械部品」としての労働者の概念が明確となる。

バベッジは、工場の全自動化を目指していた。

バベッジは、彼の新分業論「バベッジの原理」を、彼が作ろうとしていた蒸気コンピュータと対比して説明している。

そして、この「労働者にとっての悪夢のシナリオ」は、バベッジの書を読んだ、ロンドンの亡命ドイツ人、

カール・マルクスの労働論に強い影響を与えたといわれている。

ここまで現代の話ばかりだったが、ここから歴史の話に入る。

まずは、情報技術史の有名な「エピソード」で、その昔、コンピューターは人間だったという話から始める:

これらは、「こんな大変なことが現代のコンピュータで簡単にできるようになりました、すごいですね!」とか、「現代のコンピューティングの技術は案外古い時代からのものを継承している」という「驚きのエピソード」として、情報史の教科書などで紹介されることが多い。

しかし、実は、その経緯をより古い時代に遡り、経済学史、社会学などの研究や理論を使うと、情報技術と現代社会の関係がまったく違って見えきて、これらのことが Amazon FC に、そして、現在問題となっている「雇用の未来」の問題にも繋がっていることがわかる。

その「より古い時代」とは、大英帝国という「日が沈むことが無い帝国」が絶頂期にあった19世紀半ばのヴィクトリア朝のことであり(質問票への回答の資料の4のシティバンクの話と比較してみて下さい)、場所は、その大英帝国の首都ロンドンである。そして、主要登場人物は、英語圏ではスチーム・パンクのヒロインとして人気があるエイダ・ラブレス(Wikipedia)とともに、スチーム・パンクヒーローとして知られ、コミックにも登場するチャールズ・バベッジ。まず、日本では、無名に近い、このパベッジの話から。

参考(英語圏と日本語圏での認知度の違い)

チャールズ・バベッジ:スチーム・コンピュータと部品としての人間

後に学ぶウェーバー社会学やマクドナルド化理論では、近代の特長を形式合理性にみる。そして、形式合理的システム、あるいは、形式合理的な思考法とは、

と言える。

形式合理的システムの非人間的側面を、ピッカーのような、通常、「労働者」と呼ばれている人たちの側から見たら、

のように見える。

また、それを、今は、もう流行らないマルクス主義の立場からみれば、

となる。

チャップリンが1950年代のアメリカの赤狩りの中で、アメリカ国外追放になったのは、この眼差しの類似性のためだった。

しかし、これを「労働者」を使う側、つまり、通常「経営者」とか「資本」と呼ばれている側から見たら、これから紹介する

での議論のように見える。

アダム・スミスは有名。

しかし、チャールス・バベッジ Who?

チャールズ・バベッジとは? 

19世紀イギリスの数学者

しかし、現在一番有名なのは「コンピュータの祖」としてのバベッジ

  「現代経済学の先駆者としてのバベッジ」と「コンピュータの祖としてのバベッジ」は深く関連していた。

 

バベッジの先駆者アダム・スミス

しかし、実はルーツはさらに古い。

バベッジの思想は、資本主義思想から生まれたものであり、そのルーツはアダム・スミスの「国富論」であることが、歴史資料の検討から分かる

これを以下では歴史の順番、つまり、アダム・スミスから時間の順番で説明する。

後代になると分業論の議論が段々複雑になるので、一番簡単なスミスの分業論から始めるのがわかりやすいために時間順で説明する。

分業論とその祖 アダム・スミス

経済学で「分業論」と呼ばれているものがある。その祖はアダム・スミス。

彼の分業論でアダム・スミス(そしてバベッジ)は、次の様なことを主張した。

熟練工が行なう仕事を分析して分解すると、その一つ一つは案外単純である。

その様に分解された仕事は、同じ仕事の繰り返し(単純労働)になり、熟練した職人が行なう必要はない。

だから素人でも仕事ができる。

だから技能のない人に仕事を提供できる。

また非熟練工は労賃が安い(取替えが効き、たくさんいるから)。

だから、雇用者側はより少ない出費で生産ができる(効率化)。

一人の労働者の仕事の種類は多数でなく一つに限定する方が労賃の観点からは経済的。

仕事が効率化するので余剰の時間ができて、高度の頭脳労働(研究・開発)を行なえる。

以下、これを詳しく説明する。

分業論の始まり:アダム・スミス「富国論」の分業論

アダム・スミス国富論 1776年刊

有名なピン製造所の分業論の要旨(ピンとはheadpinのことらしい。あるいは、こんなの?)

国富論・分業論における労働者(職人)への視線

そしてバベッジの分業論

以上のような、18世紀(1776年)スコットランドのアダム・スミスの分業論に対して、19世紀(1833年)のイングランドのバベッジは分業論をさらに展開した。そして、それはスミスのものと異なり、労働者の人間性を殆ど顧みないものだった

熟練工が行なう仕事を分析して分解すると、その一つ一つは案外単純である。

その様に分解された仕事は、同じ仕事の繰り返し(単純労働)になり、熟練した職人が行なう必要はない。

だから素人でも仕事ができる。

だから技能のない人に仕事を提供できる。

また非熟練工は労賃が安い(取替えが効き、たくさんいるから)。

だから、雇用者側はより少ない出費で生産ができる(効率化)。

一人の労働者の仕事の種類は多数でなく一つに限定する方が労賃の観点からは経済的。

仕事が効率化するので余剰の時間ができて、高度の頭脳労働(研究・開発)を行なえる。

以下、これを詳しく説明する。

続く…

前回の史料が大量だったので、今回の史料はありません。