「情報技術の現代史」メモ 2019.04.11

この講義の内容と目的

この講義の主テーマは、近代資本主義と情報技術の関係です。情報技術の歴史は近代資本主義の成立と深く関わっている、それを理解してもらうことが、この講義の大きな目的となります。

そして、それを理解することで、今まで起きてきたこと、今起きていることの「理由」を知ることが出来て、そのことが理解できれば、未来に置きそうなことも、ある程度は見えてくるということを知ってもらう。それが、この講義の最終的目的となります。

新技術が生まれて、それにより社会が変わると思われがちですが、社会が変化するために、新技術が生み出されてきたのが、現実の歴史です。そういう意味では、情報技術は近代資本主義を成立させるために生まれてきた技術といえるのです。

この情報技術と資本主義の関係を、古い文献も使いながら歴史学的に示します。そして、その事実を踏まえて、歴史を振り返ることにより、AIが当然となる近未来の社会の様子、特に格差問題、労働問題についての予測を行います。

資本主義が関連するために、この講義では、情報技術についての歴史資料だけでなく、経済学・経済史などの歴史資料も取り上げます。

また、一世紀ほど前の機械文明の時代の社会と技術の関係と、現代社会の社会と技術の関係を比較するために、両方の時代の映画を見て、その表象論的分析を行います。これは、映画の表現に現れる、各時代の考え方を分析して、それを比較するということです。これにより、ITの時代である現代におけるITの社会的意味を理解します。  

歴史を紐解いて、現在の社会についての問題を考える社会学、また、社会学理論をつかって歴史を理解する、そのような研究分野があり、歴史社会学などといいますが、この講義は、実は、その一種です。そのため、歴史学だけでなく、理解のための方法論である社会学の入門的な話もします。

AI, ITが生み出す格差、そのルーツは19世紀のイギリスに!

多くの仕事がAIに奪われるのではないかと心配する声が大きくなっています。多くの人が失業すれば、日本社会でも問題となっている格差はさらに広がります。

AIだけでなく、ITの進歩により格差が広がる、これは、確実なことですし、現在の格差も、実は、ITや、一見、ITには見えないが、その実、同じ仕組みで動いているもの、広い意味でのITによって生み出されている面が強いのです。

実は、このIT、広い意味でのITによる格差の問題のルーツは、19世紀ビクトリア朝の英国にもとめることができます。

コンピュータの先駆者であり、また、現代的経済学の先駆者でもあった、チャールズ・バベッジという人は、バベッジの原理とよばれている「格差を利用して資本家がもうける方法」を発明したばかりか、この原理によって資本家の儲けのために、低賃金で働かされる労働者たちを、最終的には、彼が作ろうとしていた蒸気機関で動くコンピュータで代替することを考えていたのです。

講義では、このことを、スタンフォード大学の経済史家 N. Rosenberg,の著書や、イギリスの科学史家の歴史解説、そして、バベッジ自身による、経済学書を使って、厳密な歴史学の方法で説明します。

そして、この19世紀の歴史的事実と、2000年に日本でのビジネスを開始した Amazon の日本での歩みとを比較します。

講義では、まず、アマゾンの配送センターの2005年ころから現在までの姿と、その進化を、色々なネット上の動画や記事、そして、アマゾンが日本に上陸したころのTVニュースなどを使って見ます。

そして、その後で、バベッジの話をして、これらを比較することになります。

では、まず、現代のアマゾンの話からはじめましょう。

アマゾンの配送はなぜ早い?

(シラバスでは「アマゾンの箱は何故大きい」となっている項目)

アマゾンで注文すると、早いときには、当日に届くことさえあります。

なぜ、こんなことができるのでしょうか?

楽天では、こうは行きません。

これはパケット(段ボール箱)を運んでくれる宅配業者の問題でしょうか?

それは、ありえません。アマゾンも、楽天も、同じ様な宅配業者に頼っているからです。

宅配は、驚くほど速いのです。

ということは、アマゾンと楽天の差は、荷物(パケット)が宅配業者に手渡される前、つまり、発送の前にあることになります。

それは、現在の、最新のアマゾンの配送センターでは、この様になっているのです。

この動画は、昨年の10月に改行した、日本で2番目に Amazon Robotics というロボット技術を導入した(一番目は川崎FC)、アマゾンの配送センターアマゾン茨木FCの動画です(茨木FCの位置)。

この動画の「動く棚」が、Amazon Robotic のロボットなのですが、それが、アマゾンの配送で、どんな役割をしているのか、手前に立っている「茨城FC」という制服を着ている人は、なんの役割をしているか、これを理解することが、上に説明した19世紀のイギリス、ビクトリア応用のIT、バベッジの蒸気コンピュータと、現代資本主義の関係を理解する鍵となります。

しかし、それは、アマゾンの他の配送センター特に、日本に上陸したばかりの頃の配送センターの仕組みの理解から始めると分かりやすいので、この動画の詳しい説明は、今は避け、古い話から始めましょう。

アマゾン茨木FCは「最新」の場合で、多くの配送センターでは、いまだに人間だけで同じことをしています。

その人間を、「ピッカー」とか「ピック」と言います。

その実態を見てみましょう。

Amazon.co.jp FC14年の「進化」の歴史を見る

上で見たロボットを使う発送作業は、Amazon が、フルフィルメントセンター Fulfillment Center略して FC と呼ぶ配送センターで行われている。

日本にも、多くの配送センターが存在し、その内の最前線が、上にしめしたもの。

アマゾンの配送センターの内、一番古いものが、千葉市川FCで2005年の開業。

2005年から今年までの14年におけるFCの進化を見る。

そのために、まず、2005年開業の千葉市川のFCと2009年開業の関西初のFCである、堺FCについてのTVニュースの動画を見て、現在も主流のロボット無しのFCの仕組みを知る。

ポイントは、バラバラの配架と、ピッカーと呼ばれる人々。堺FCの動画は、以前は、自由に鑑賞できたが、数年前にコピーライトの問題で削除された。そのため、林が保存しておいたものを見せるので、WEB上の講義資料では閲覧できない。コピーライトの問題で配布ものできないので、講義中にしか見せられない。

それでは、ロボットが導入される前のFCの話から…

Amazonの配達は超高速

注文したら、翌日には、早ければ、その日の内に、商品が届くのが、Amazon.

現在は、楽天のあす楽など、Amazon 以外の会社の配達も早くなっているが、未だに、楽天で出店している個人商店などでは、なかなか、こうはいかない場合が多い。

また、Amazon は在庫が実店舗の小売店より、豊富で、さらに価格が低いことも珍しくない。(Amazon自身は、価格が低いというのは否定しているらしい。)

なぜ、この様なことができるのか?

その理由は色々あるが、最大のものは、FCという存在。

そして、このFCは日夜進化し続けていて、その進化にも、「ITと現代資本主義の関係」が見て取れる。

ということで、まずは、Amazon のFC、Fulfillment Center の仕組みを理解する。

Amazon 高速配送の仕組み

FCという巨大マシン

Amazon FC というマシンと人間の関係を分析する

次回、Amazon FC は、ピッカーという人間を部品とする巨大な一つのハードディスクの様な機械であることを示します。

以下、次回…

講義の仕方

最後に、講義の仕方を説明して、今回は終わりです。

採点は、1回のレポートと出席でつけます。レポートが95点、出席が5点です。

出席は、これから配る質問票というものを使って採点します。

次の画像の小さな紙片が質問票です:

質問票は、基本的には、みなさんに質問をしてもらうためのものです。

しかし、これを出席点の評価にも使います。

質問票には、必ず、氏名と学生番号を書いてください。

講義が終わる5-10分ほど前に、質問票タイムを設けます。

その5-10分の間に、氏名と学生番号と、そして、質問を書いて提出してください。

そして、講義室の一番下の机、つまり、一番演壇に近い机の上に、次の画像のような折り紙の箱を6個ほど置きますので、それのどれかに自分の質問票を入れてください。

次の画像の様に、箱と縦横を合わせて入れてください。

こうして提出してくれた質問には、次回の講義の冒頭に答えます。

氏名、学生番号を書いてもらうのは、わずか5点ではありますが成績の為と、責任をもって質問をしてもらうためです。

みなさんの質問には、できる限り答えます。

登録者数が、今の時点で400近くと多いので、大変なのですが、ちゃんとやります。

是非、分からなかったところ、疑問に思える点、自分で考えた意見、そういうことを質問票に書いて提出してください。

また、4月25日に休講を予定しており、その替わりの補講、実際には、レポートの相談会を7月に実施する予定です。詳細は、皆さんの意見や出席数も考慮して決めます。

では、今回は、これで終わりです。質問票を提出してから退出してください。