情報歴史社会学入門メモ(13) 2014.07.09

今回は2回分の質問票に答えます。

前々回

  1. 日本人は能楽のように昔から deep acting を好むのではないか?

前回

  1. エリジウムとメトロポリスを見て、格差の存在は百年たっても変わらないのだと感じた。
  2. LAの景色をなぜ他国で撮ったのか?不思議だ。

前回の資料

現在の、感情資本主義が生まれてきた歴史過程を振り返り、その後、未来を見る。

HANDからHEAD(BRAIN),そして、HEARTへ

まず、メトロポリスの後半部分を見て、その後、HAND(肉体労働者、筋肉資本主義)からHEAD (=BRAIN, 知的労働者、頭脳労働者)へ時代が変遷し、さらにHEART(感情労働者、感情資本主義)へと時代が変遷したことを見る。

HANDからBRAIN(=HEAD)への変遷は、アメリカのアルビン・トフラーという未来学者の1980年の著書「第三の波」で「農業革命」「産業革命」に対する「情報革命」として取り上げられて、当時のアメリカや日本で話題となった。

この頃から、PCが普及し始め、「情報化社会」「情報社会」というバズワードが実感を持って多くの人たちによって語られるようになった。(日本では梅棹忠夫が1960年代に「情報産業」という言葉を世界に先駆けて使ったと言われるが、これはTVの様な放送の産業がモデルだったので、トフラーの議論と比較することには無理がある。)

そして、さらに、LIFEへ

まず、最初にHANDからHEAD,そしてHEARTへという、メトロポリスの時代からの歴史の変遷を見た後、昨年度公開された映画「エリジウム」に、現代と近未来を見る。

メトロポリスの粗筋

ウィキペディア日本語版

その意図の分析: 2020年台の未来都市メトロポリスにおいては、資本(家)はその頭脳 BRAINあるいはHEAD(科学技術のこと)により世界を支配し、労働者は、その手足 HAND となって働く。HEADは物理的にHANDを支配・搾取している。その統治の機構は、メトロポリスの街の構造が象徴するように、頂点のバベルの塔の先端に位置するのオフィスの Fredersen から、Josaphat に率いられる、その直接の部下たち(これもBRAIN)、そして、職長 Grot が率いるハート・マシン(都市の心臓)よりさらに地下深くに住まう労働者 11811 Georgy のように番号で管理される労働者たちにいたるピラミッド型官僚制であり、その厳格さは、緊急事態の連絡不備だけで Josaphat が回顧され自殺を図るほどである。

資本家たちにさえ、やさしい感情を持つ地下の宗教的指導者 Maria は、Frederson の息子で彼女に一目ぼれしてしまった Freder のやさしい気持ちを見抜き、彼に HEAD と HAND を調停する魂 HEART としての役割を託す。科学技術の象徴ともいうべき Rotwang と、彼が生み出した機械人間 Maria のために、メトロポリスは労働者の蜂起で大混乱に陥り労働者の子供たちが死の危機に瀕する。しかし、Maria, Freder, Josapaht の活躍により子供たちは助けられる。蜂起した労働者は、機械人間 Maria の機械としての正体を知り、また、子供たちが自分たちのために死の危機に瀕していることを悟り悲嘆にくれる。

マッド・サイエンティスト Rotwang は Maria を大聖堂の屋根に追い詰めるが、Freder (HEART) が Rotwang (機械、科学技術) に闘いを挑み、Maria は救われ、Rotwang は、その機械人間とともに滅びた。

そして、 Freder, Maria (HEART)により、自分たちの子供が救われたことを知った労働者たちは、ついには HEART である Freder の調停により資本と握手をし、ストーリーはハッピーエンドに終わる。

資本と労働者、頭脳(HEAD)と肉体(HAND)を仲介するものは心(HEART)である。

注1.時代設定は、リリースの1926年の100年後といわれるが、確たる証拠を見つけていないので、2020年代としておく。

ここには、まだ、未来への希望が見える。当時のドイツを支配し、多くの人々が、その恩恵を得ながらも敵意も抱いていた「機械文明」を打ち破ることにより、資本家と労働者の対決という、抜き差しならないように見えた事態を、キリスト教のような伝統的なヨーロッパの価値観が解決するというストリーになっている。

また、Fredersen のオフィスの「ディスプレイ」など情報機器を暗示するものも登場するものの、「ハイテク」の象徴は、すべて機械、つまり、金属などの個体でできた機械であった。

それが約90年後の2013年に作られた映画「エリジウム」では、どうかかわっているか。上の説明赤文字に注意しながら、見てみよう。

その前に、3点:

  1. エリジウムとは何か?ギリシャ神話の死語の理想郷。ただし、死後であることに注意。
  2. 映画「エリジウム」を監督した南アフリカ共和国出身のニール・プロムカンプは、この映画を、SFではなく、現在の状況を映す映画だと言っている。1979年生まれの彼は少年期を南アで過ごし、18歳のときにカナダに移住し、2009年の「第9区」という映画で監督として高い評価を得た。実は、この人の背景は、ビデオ・ゲーム。
  3. 冒頭のLAのシーンのかなりは、実はメキシコ・シティで撮影されている。

今回の資料

エリジウムの粗筋

ウィキペディア日本語版 英語版

2154年の地球では、少数の超富裕層が静止軌道上のスペースコロニー、エリジウムに住み、多くの人々は地上で現在のスラムのような場所に住んでいた。地球とエリジウムの治安は、エリジウム自身を作ったカーライルのアームダイン社 Armdyne Corp. のロボットや兵器で保たれていたが、その機械的・形式合理的・官僚的な支配は貧困層には過酷だった。この時代の官僚制はすでに官僚・警官ではなく、機械により行われるようになっていたのである。そして、その兵器はロボットは地上で作られていた。

そのような地上の工場で働いていた一人が、主人公、マック、マックス・ダ・コスタである。彼は元伝説的自動車泥棒だったが、今は工員としてまじめに働いていたが、自分たちを支配する機械官僚システムに敵意をもっており、つい発した皮肉のために、警官に骨折を負わされてしまう。骨折治療のために病院を訪れたマックスは、そこで看護師となった、少年時代のあこがれの美少女フレイと再会する。マックスの夢は、いつの日にかフレイをエリジウムに連れて行くことであり、そう約束していたのである。

マックスが生産するロボットが、21世紀の中ごろには実現されていそうな程度のものである一方で、22世紀の生命科学の進歩は著しく、あらゆる怪我や病気を、簡単なスキャナーのような機械で瞬時に直すことができるほどであった。それは若返りも可能にし、エリジウムの住民の多くの年齢はおそらく100歳を軽く超えているはずだが、一見、50代、60代のように見えた。この時代、たとえば、エリジウム政府とアーマダイン社の間の契約は、100年単位で語られてたのである。

一方、フレイが務める地上の病院の医療のレベルは、21世紀の現代とほぼ変わらず、たとえばシングルマザーのフレイの娘マチルダの白血病をフレイはどうすることもできなかった。21世紀の現在では多くの癌が次々と治る病になっている。しかし、140年後の地球には、現在、先進国とアフリカなどの貧しい地域に存在する以上の医療格差が存在したのである。

そのため、病気や怪我の子供を抱える母たちは、エリジウムに密入国してでも子供たちの病気を治そうとした。その様な動機だけでなく、密入国を企てる人々を少なくなく、それを請け負う密入国業者も存在した。それは、現在のメキシコの貧困層が命がけでアメリカを目指す、まさにその構図そのものである。

その様な密入国業者の一人スパイダーは、3機のシャトルをエリジウムに送り込んだが、彼のいささか甘い予想に反し、エリジウムの防衛長官デラコートは、地上に住むエージェントで荒くれ者のクルーガーに命じて、地上からのミサイルで3機の密航船を撃ち落とさせようとした。2機は到達前に破壊され、最後の一機はエリジウムに到達したものの、一人の少女がその骨折をいやすことに成功したものの、結局全員逮捕あるいは殺害された。

デラコートの過酷な対応はエリジウムの官僚たちにさえ不快に思われいた。市民はなおさらである。エリジウムの大統領パテルは、地上のエージェントを使ったことが命令違反であることを批判し、クルーガーを解雇させるとともに、次の命令違反によりデラコートが解任されると告げる。これを機に、デラコートはクーデターを計画する。カーライルを呼んだデラコートはエリジウムの制御プログラムを自分を大統領にする様に書き換え、その新プログラムでシステムをリブートすることを命じた。見返りは契約期間の200年延長である。

カーライルは、地上で、そのプログラムを書きあげ、それを自らの脳の記憶域にアップロードし、安全のため、もしダウンロードされたとき、その記憶を持つ者が死に至る様に暗号をかける。

一方、地上のマックスは、工場で放射線を浴びてしまい、後5日の命と宣告され、症状を和らげる薬を与えられただけで解雇される。マックスは生き延びるため、旧知のスパイダーに自分をエリジウムに送ってくれるように懇願する。マックスが必死であることを知ったスパイダーは、以前から温めていた計画、エリジウムの住人の誰かを誘拐し、その脳の記憶域のすべての情報をダウンロードして、一挙に富を盗み取るという計画を実行に移す。スパイダーは、マックスの脳に記憶装置を埋め込み、また、弱っている彼にパワード・スーツのような人工骨格と筋肉をとりつける。

これによりサイボーグ化したマックスは、おりしもクーデターのためにエリジウムに帰ろうとしていた、恨みあるカーライルを標的として、地上で追跡し、大怪我を負った彼が死亡する直前に、その脳内記憶域の全情報を盗み取る。当然、それにはクーデーター用のプログラムも含まれていた。スパイダーは、そのプログラムを分析し、地球の住民すべてをエリジウムの市民にすることかが可能なプログラムであることに気がつく。

カーライルの記憶がマックスに盗まれたことを知ったデラコートは、クルーガーにクーデーター用プログラムを取り返すことを命じ、クルーガーとマックスの死闘が始まる。

ここから、ハリウッド映画特有の死闘・乱闘になり、偶然が偶然を重ねるややこしい話になり、それは講義のテーマとは関係がないので(ただし、エンターテイメントとしては、一番の見どころですが)、少し飛ばして、結末の説明へ。この最後の部分の、また、その最後の部分だけ、映像も見ます。

結末:死闘の末、クルーガーとその手下に捕まったマックスは、自らの脳を破壊すると脅して、自分をエリジウムに連れて行かせる。実は、その時、クルーガーの船には、やはりクルーガーにとらえられたフレイとマチルダが乗っていた。そして、場面はエリジウムに移る。スパイダーも自らの船で侵入に成功しており、登場人物たちは、皆、エリジウムに終結し、マックス、フレイ、スパイダーたちは合流してクルーガーと対峙し、また、カーライルのプログラムを使い、自分たちの病を治そうとする。ここでさらなるクルーガーとマックスの闘いが続くが、なんとかクルーガーを倒したマックスは、スパイダーとともに中央制御室に侵入し、プログラムをダウンロードして、地球の住民全員を市民して、マックスとマチルダの病を治そうとするが、スパイダーは、それを行うとマックスが命を落とすように防御がかかっていることに気がつく。マックスは、自らの命をあきらめたとことをフレイに電話でつげ、自らの死と引き換えにダウンロードのボタンを押す。エリジウムをリブートされ、マチルダはいやされ、そしてエリジウムの医療システムは、地上の「市民」たちをいやすために、医療船を地球に送る。

メトロポリスとエリジウムの比較

以下、上段がメトロポリス、下段がエリジウム

支配層の位置

労働者・貧困層の位置

労働者・貧困層の境遇

富裕層と労働者・貧困層の距離

支配層=資本家(富裕層)と技術者とエージェント

富裕層の豊かな生活を維持するハイテク

反乱で打ち壊されるもの

結末

以下、纏めへ 幾つかのキーワード

HANDからHEAD、そしてHEARTへ?

本当にHEARTなのか?どのようにHEARTなのか?

生命科学とIT:エピジェネティクス

iPS細胞、ES細胞の技術で行われていること。おそらく、完全なリセットではなく、ロールバックが可能な時代が来る。

スーパーリッチと貧困

なぜスーパーリッチは存在するようになったか?: ピケティの理論

ITという要因: 薄く広い利益の膨大性

これはバベッジという「悪夢」の実現なのか?

ITは資本の道具か、民衆の武器か?

どちらも正しい世界