情報歴史社会学入門メモ(9) 2014.06.04

前回までの資料から

マルクス主義、唯物弁証法、とくれば、階級闘争、プロレタリアートとブルジョアジーの対立の問題が思い起こされるが…

その様な、「バベッジの夢=マルクスの悪夢」が実現された社会は、どんなものか?

トヨタ、アマゾンという資本装置がブンブン唸っている現代日本社会は、「バベッジの夢=マルクスの悪夢」なのだろうか?

以下、これを社会学の理論を使って考えいく。

まずは、今は「遠い」過去のものになっているマルクス主義世界観を体感するために、マルクス主義世界観のもとに作られた、最初期のSF映画の傑作といわれる映画「メトロポリス」を見る。

この映画はYouTube でみることができます:英語版ドイツ語版

今日は英語版の最初の方だけを見ます。無声映画なのでストーリーが良く分からないと思いますので、林が説明しつつみますが、分からないところがあったら、YouTube版で見直しておいてください。残りの部分は、後で講義に関連した所だけを見ますが、できれば自分で全部見ておくと理解の助けになるでしょう。その際、参考となるサイト:    特に登場人物の地位と、力関係、どこにいるか、特にその場所の高度、に注意(場所が地位のメタファーになっているので)。

 

現実の歴史では?

資本主義の問題の(一時的?)解消の要因の一つ「日本型モデル」

これ以下、歴史学から社会学へ: 歴史学で史料にもとづいて確認した系譜(スミス、バベッジ、マルクス、そして、アマゾン)の意味を社会学理論で考える(解釈する)。つまり、歴史的事実に意味を与える。

なぜ社会学か?

これからの話で社会学の理論が果たす役割:

二つの注意:

  1. 上の1と2を完全に分けることは難しい。  
  2. 歴史学という名前のものに社会学の理論が陽に使われることは少ない。

どの様な社会学理論がどういう風に使われるか:

まずは、ウェーバー社会学から。

ウェーバー官僚制論

ウェーバーが「現代的」官僚制の特徴として挙げた条件を Anthony Giddens, Sociology,7th edition, p.826 の記述を使って説明したもの

  1. 職権の階層構造:官僚機構はピラミッド構造を持ち、トップから 底辺へ命令が整然と流れる。各メンバーは、その直下のメンバーをコントロールする。 いわゆる、トップ・ダウン型意思決定で動くということ。
  2. 成文化されたルールで動く。ただし例外はあり、より上位のメンバーは、より多くの意思決定の自由を持つ。
  3. メンバーはフルタイムの給与制で雇われる。給与は「職」により定義される。 
  4. 成員の「生活」(人生)は、その「職」と分離されている。
  5. 官僚制システムのメンバーは、そのシステムの所有者ではない。

注意:ギデンズの説明を、さらに林が纏めたもの。ウェーバー自身の言葉やリストによるものではない。たとえば、ウェーバーは「ピラミッド型」「トッ プ・ダウン」などの現代的用語は使っていない。これはギデンズによる。ウェーバーの元の説明は、ギデンズのもののように判り易くはない。

ウェーバーの官僚制の意味するもの

ウェーバーの意味の官僚制とは官僚という人間を部品とする組織機械のための設計思想

ここから今回追加した資料

官僚制の悪口に使われる

は、それが人間という生身の存在を部品とする機械なのだから当たり前!丁度、バベッジとマルクスの分業論がローゼンバーグが弁証法的な裏返しとジョークを飛ばすほど似ているが表裏一体なのと同じ。

官僚制システムが効率的な理由と今まで見て来たものとの関連

官僚制システムの効率性の源その1 人間的要因

官僚制システムの効率性の源その2 組織構造的・情報学的要因

実は、上のような話と全く違う、数学のような仕組みが官僚制の効率を支えている。

それは分業ということ。また、分業の効率性の根源は、「ツリー状、ピラミッド状の構造の効率性」ということ。

その「ツリー状、ピラミッド状の構造の効率性」の象徴は対数(高校では数学II?)というもの。

 対数は指数の逆。対数関数は指数関数の逆関数。

ツリー状・ピラミッド状のシステムとは

官僚制のシステムの説明で、それが形としてはピラミッド状、ツリー状だと説明した。

その意味は?

まず、ピラミッド状とツリー状の意味

ピラミッドとツリー(木) 一見なにも似ていないが??

ITにおけるツリー状ということの意味

ツリー状とピラミッド状は同じ意味 

今までに出てきたツリー・ピラミッド構造

ドプロ二―プロジェクトの人員配置だけでなく階差計算自体がツリー・ピラミッド構造を持っている

以後、ツリー・ピラミッドと言わず、単に、ツリーという。

なぜツリーは効率がよいのか?

いろいろな要素を無視して、簡単にいってしまえば、ツリー構造は仕事を分解する、つまり、分業化するということ。

ドプロニープロジェクト、階差計算がツリー構造をしているのはすでにみた。

これは仕事を分解して簡単な仕事に還元することにより、それを非熟練工に行わせていた。

仕事のプロセス、仕事を行う組織の双方に、分業化の構造が反映され両方ともツリーになっている。

仕事は分解すると効率が良い!

その理由は倍々ゲームの裏返しになるから

倍々ゲームとは: またの名をネズミ算。 曽呂利新左エ門 の話(湖を覆う水草の話としても有名)。

倍々ゲームは人間の直観を超えるスピードで増加する。

それならば、一回ごとに半分になる「半々ゲーム」だと、直観を裏切るくらい小さくなるはず。(これが指数関数!倍々は対数関数

たとえば、900を半分半分にしていくと。

1 900
2 450
3 225
4 113
5 57
6 29
7 15
8 8
9 4
10 2
11 1

しかし、これでは全然すごく見えない…

そこで、これと同じことを、辞書で単語を引く、つまり、辞書という単語データの蓄積の中から、希望する単語を検索する、ということでをやってみる。

みなさんは辞書(紙の辞書)をどうやって引いているだろうか?

もし、機械的にやるとしたら、次のようにすればできる。

 

実は、これは2分探査木と呼ばれるツリーの構造になっている。

実演に使った辞書は11万項目ほどある。ページ数は1800なので裏表2ページのシートは900枚。

11万の単語が辞書の順序に並んでいなければ、Schwan を最悪の場合、11万語と照らし合わせる必要がある。

それが今の実演のようにすぐに見つかったのは、半々ゲームにより、探すべき範囲が急速に狭まるから。

サーチと人間の組織としての官僚制や官僚制的な組織との関係

京大の総長と理事。実はこれはツリーの一段。この下に理事補などがある。

ツリーの全体像

会社、政府、NPO、NGOなど、さまざまな機構や組織もすべてツリー。

基本的に組織の長の仕事の多くは、仕事を部下に割り振り指示を行うこと。

教育関係の仕事は教育担当に理事に振られ、その時点で他の理事は、その仕事と無縁となる(ただし、原則の話)。
これはSchwan を探すとき、半分にわけたページの片方が、「その中に Schwan はない」とわかって検索の範囲から
除外されるのと同じこと。

膨大なデータのうち、関係ないものを大量かつ高速に捨てていく(逆の言い方では関係があるものだけを絞り込んでいく)
ことができるかどうかが、高速に大量のデータ(仕事)をこなすポイント。

ツリーは、このように使われる。

この技法は、ITでは「分割統治」 divide and conquer とよばれるが、これはローマ帝国の統治方法のこと。
歴史上の大帝国のほとんどは、この方法を使って広大な領土や征服した民族を統治している。
元寇のときに攻めてきた兵隊が実は韓半島の人々だったというのもそれ。他にはオスマン帝国など。

つまり、近現代の統治装置、官僚制のツリーも、基本的には同じ仕組み