情報歴史社会学入門メモ(8) 2014.05.29

質問票回答の資料

5月14日の資料から

アダム・スミスとバベッジを繋ぐフランスの大対数表作成プロジェクト

フランスの大対数表 (§241-243)

  1. 知的労働の分業が機械的操作(労働)の場合と同様に可能であり,それはどちらも時間の節約,時間の経済,に結びつく. (241)
  2. 歴史上最大規模に行われたフランスのド・プロニーの計算プロジェクトが,この考え方の現実性を説明している (242)
  3. その考え方の元はアダム・スミスの国富論にあることをド・プロニー自身が語っている。(243)
  4. ド・プロニーが考えた組織構造は三層構造による「知の分業」だった(244)
  5. 最下層の労働の量は大きいが、労働の価格は安くてすむ。
  6. 最上層の仕事は大変だが(extertions)、一度やれば済む。
  7. しかし、計算機(a calculating-engine) が作られて最下層を置き換える時には、数学的見直しが必要かもしれない。(245)

5はバベッジの原理の視線を連想させる。

3は、アダム・スミスの分業が知的労働に応用可能であることをド・プロニーを通して知ったことを示唆する。ただし、自伝に de Prony の名前がないことから、de Prony は知的分業の有効性の説明のためにだけ使ったという可能性はある。(アカデミックな学問では、こういう reservation を常に持たなくてはいけない!)

7は、バベッジが既に低賃金の機械的仕事をする労働者を、本当に機械で置き換えることを考えていたことを明瞭に示している。

人間の仕事が、知的仕事であっても機械に奪われる可能性があるという、このところ良く聞かれる意見の源は、この様に、すでに1810-30年代のイギリスまで遡れる。つまり、およそ2世紀前。

そして、バベッジの On the Economy of Machinery and Manufactures の四半世紀後、バベッジが住んだ同じロンドンの大英図書館で、バベッジの分業論などを手がかりにしつつ、この「機械的仕事をする部品の様に使われる労働者」の問題を、労働者側から見て、新しい経済学理論を綴っていたひとりの亡命ドイツ人(プロイセンのユダヤ人)がいた。

それがカール・マルクス。そして、彼が書いていた経済学理論こそが「資本論」。

5月21日資料から (少し修正、加筆)

実は、その資本論の数か所でバベッジの On the Economy of Machinery and Manufactures が引用されているおり、N. Rosenberg はバベッジの分業論がマルクスに影響を与えたと指摘した。以下、その話の解説。

バベッジの裏返しとしてのマルクス資本論における「分業論」

注意:正確に言えば「阻害論」であって分業論ではないので括弧を付けてある。

マルクス主義、唯物弁証法、とくれば、階級闘争、プロレタリアートとブルジョアジーの対立の問題が思い起こされるが…

その様な、「バベッジの夢=マルクスの悪夢」が実現された社会は、どんなものか?

トヨタ、アマゾンという資本装置がブンブン唸っている現代日本社会は、「バベッジの夢=マルクスの悪夢」なのだろうか?

以下、これを社会学の理論を使って考えいく。

まずは、今は「遠い」過去のものになっているマルクス主義世界観を体感するために、マルクス主義世界観のもとに作られた、最初期のSF映画の傑作といわれる映画「メトロポリス」を見る。

この映画はYouTube でみることができます:英語版ドイツ語版

今日は英語版の最初の方だけを見ます。無声映画なのでストーリーが良く分からないと思いますので、林が説明しつつみますが、分からないところがあったら、YouTube版で見直しておいてください。残りの部分は、後で講義に関連した所だけを見ますが、できれば自分で全部見ておくと理解の助けになるでしょう。その際、参考となるサイト:    特に登場人物の地位と、力関係、どこにいるか、特にその場所の高度、に注意(場所が地位のメタファーになっているので)。

 

現実の歴史では?

資本主義の問題の(一時的?)解消の要因の一つ「日本型モデル」

これ以下、歴史学から社会学へ: 歴史学で史料にもとづいて確認した系譜(スミス、バベッジ、マルクス、そして、アマゾン)の意味を社会学理論で考える(解釈する)。つまり、歴史的事実に意味を与える。

ここから今回追加の資料

なぜ社会学か?

これからの話で社会学の理論が果たす役割:

二つの注意:

  1. 上の1と2を完全に分けることは難しい。  
  2. 歴史学という名前のものに社会学の理論が陽に使われることは少ない。

どの様な社会学理論がどういう風に使われるか:

まずは、ウェーバー社会学から。

ウェーバー官僚制論

ウェーバーが「現代的」官僚制の特徴として挙げた条件を Anthony Giddens, Sociology,7th edition, p.826 の記述を使って説明したもの

  1. 職権の階層構造:官僚機構はピラミッド構造を持ち、トップから 底辺へ命令が整然と流れる。各メンバーは、その直下のメンバーをコントロールする。 いわゆる、トップ・ダウン型意思決定で動くということ。
  2. 成文化されたルールで動く。ただし例外はあり、より上位のメンバーは、より多くの意思決定の自由を持つ。
  3. メンバーはフルタイムの給与制で雇われる。給与は「職」により定義される。 
  4. 成員の「生活」(人生)は、その「職」と分離されている。
  5. 官僚制システムのメンバーは、そのシステムの所有者ではない。

注意:ギデンズの説明を、さらに林が纏めたもの。ウェーバー自身の言葉やリストによるものではない。たとえば、ウェーバーは「ピラミッド型」「トッ プ・ダウン」などの現代的用語は使っていない。これはギデンズによる。ウェーバーの元の説明は、ギデンズのもののように判り易くはない。

ウェーバーの官僚制の意味するもの

ウェーバーの意味の官僚制とは官僚という人間を部品とする組織機械のための設計思想