情報歴史社会学入門メモ(7) 2014.05.21

質問票回答の資料

 

5月14日の資料

アダム・スミスとバベッジを繋ぐフランスの大対数表作成プロジェクト

バベッジの階差機関のオリジンは、彼の自伝 Passages of the life of a philosopher のChapterVに書かれている。

バベッジが、機械による数表の作成という計画を構想し始めたのが1812年か13年頃(p.42,上記グーグル・ブックスの書籍のページ数)。

図を引き始めたのが1820-1822。政府への提案が1823。(p.47)

On the Economy of Machinery and Manufactures の出版が1832。

バベッジは友人ハーシェルなどと、何度もフランスやヨーロッパ諸国を訪問しているらしいが、彼の自伝には面白いエピソードは詳しく書かれているが、それが何年のことか書かれていない。

しかし、On the Economy of Machinery and Manufactures の知的労働の分業で階差機関の話が書かれる前にフランスの大対数表作成プロジェクトのことが詳述され、それが知的労働でも分業が有効なことを示していると書かれ、また、その説明を受けて機械による計算が説明されていることから、

  1. 機械で計算を行うことを着想
  2. フランスの大対数表作成プロジェクトの詳細を知る。おそらくは並行して階差機関を設計
  3. この2の経験からバベッジの原理を発見

という経緯だと考えられる。

こう考えられる根拠となる部分が、

Chap XX. 「知的労働の分業について」

の「フランスの大対数表 (§241-246)」の部分。

背景:ド・プロニーの計算プロジェクト

以上のことを説明したのがバベッジの本の「フランスの大対数表 (§241-246)」。その内容は…

フランスの大対数表 (§241-243)

  1. 知的労働の分業が機械的操作(労働)の場合と同様に可能であり,それはどちらも時間の節約,時間の経済,に結びつく. (241)
  2. 歴史上最大規模に行われたフランスのド・プロニーの計算プロジェクトが,この考え方の現実性を説明している (242)
  3. その考え方の元はアダム・スミスの国富論にあることをド・プロニー自身が語っている。(243)
  4. ド・プロニーが考えた組織構造は三層構造による「知の分業」だった(244)
  5. 最下層の労働の量は大きいが、労働の価格は安くてすむ。
  6. 最上層の仕事は大変だが(extertions)、一度やれば済む。
  7. しかし、計算機(a calculating-engine) が作られて最下層を置き換える時には、数学的見直しが必要かもしれない。(245)

5はバベッジの原理の視線を連想させる。

3は、アダム・スミスの分業が知的労働に応用可能であることをド・プロニーを通して知ったことを示唆する。ただし、自伝に de Prony の名前がないことから、de Prony は知的分業の有効性の説明のためにだけ使ったという可能性はある。(アカデミックな学問では、こういう reservation を常に持たなくてはいけない!)

7は、バベッジが既に低賃金の機械的仕事をする労働者を、本当に機械で置き換えることを考えていたことを明瞭に示している。

人間の仕事が、知的仕事であっても機械に奪われる可能性があるという、このところ良く聞かれる意見の源は、この様に、すでに1810-30年代のイギリスまで遡れる。つまり、およそ2世紀前。

そして、バベッジの On the Economy of Machinery and Manufactures の四半世紀後、バベッジが住んだ同じロンドンの大英図書館で、バベッジの分業論などを手がかりにしつつ、この「機械的仕事をする部品の様に使われる労働者」の問題を、労働者側から見て、新しい経済学理論を綴っていたひとりの亡命ドイツ人(プロイセンのユダヤ人)がいた。

それがカール・マルクス。そして、彼が書いていた経済学理論こそが「資本論」。

ここから5月21日資料

実は、その資本論の数か所でバベッジの On the Economy of Machinery and Manufactures が引用されているおり、N. Rosenberg はバベッジの分業論がマルクスに影響を与えたと指摘した。以下、その話の解説。

バベッジの裏返しとしてのマルクス資本論における「分業論」

注意:正確に言えば「阻害論」であって分業論ではないので括弧を付けてある。

マルクス主義、唯物弁証法、とくれば、階級闘争、プロレタリアートとブルジョアジーの対立の問題が思い起こされるが…

その様な、「バベッジの夢=マルクスの悪夢」が実現された社会は、どんなものか?

トヨタ、アマゾンという資本装置がブンブン唸っている現代日本社会は、「バベッジの夢=マルクスの悪夢」なのだろうか?

以下、これを社会学の理論を使って考えいく。

まずは、今は「遠い」過去のものになっているマルクス主義世界観を体感するために、マルクス主義世界観のもとに作られた、最初期のSF映画の傑作といわれる映画「メトロポリス」を見る。

現実の歴史では?

資本主義の問題の(一時的?)解消の要因の一つ「日本型モデル」

これ以下、歴史学から社会学へ: 歴史学で史料にもとづいて確認した系譜(スミス、バベッジ、マルクス、そして、アマゾン)の意味を社会学理論で考える(解釈する)。つまり、歴史的事実に意味を与える。