情報歴史社会学入門メモ(6) 2014.05.14

質問票回答の資料

 

前回、アダム・スミスとチャールズ・バベッジの分業論を説明して、その違いを見た。

バベッジの分業論は、同じものを作るときに、なるべく少ない労賃で人を雇う方法として考えられていた。

スミスの分業論は、人を基本にしていて、同じ人たちが、より効率良く、より多くのものを生産する方法として考えられていた。

ここまでの話には、コンピュータや情報の話がないが、バベッジとスミスをつなぐ、フランスのド・プローニーの存在により、この話がコンピュータ、情報に繋がっていく。

 

5月7日までの資料の一部

バベッジ"On the Economy of Machinery and Manufactures"における分業論の主張

セクション(238)は、Chap. XIX, つまりチャプター19にある。

このチャプターのタイトルは、「労働の分割(分業)について」、On the division of labour.

そして、これから説明する、チャプター20の題名が「知的労働の分割(分業)について」、On the division of mental labour.

 

バベッジとアダム・スミスを繋ぐもの

以下で、これを彼の著書"On the Economy of Machinery and Manufactures"の該当部分を見ながら説明:

On the Economy of Machinery and Manufactures, 1832  (機械と製造業の経済について 1832年刊)

Chap XX. 「知的労働の分業について」の内容目次

フランスの大対数表 (§241-246)

つまり、バベッジの本の歴史資料としてのポイントは二つ

このことは、現代的な資本主義思想とコンピュータが手を携えるようにして登場したことを示しているが、さらなる議論にはマルクスの「資本論」の話が必要なので、これの説明は、さらに後!

では、ここから、まず、バベッジの著書の、彼の分業論が彼の蒸気コンピュータとともに構想されていたことを示す部分を見ていく。

階差原理の説明と蒸気計算機計画

階差機関と解析機関

階差機関:The differential Engine

階差計算の能力 advancedな話題

注. 階差計算を機械に実行させるというアイデアは,バベッジ 以前にもあった

階差機関はなぜ生まれたか

なぜそうまでして数表のエラーを避けねばならなかったか?

解析機関: The Analytic Engine

分業と計算機 (250)

分業と資本 (251)

 

次回、バベッジの分業論は、単に分業論としてアダム・スミスにつながっていただけでなく、バベッジのコンピュータの構想も、フランスの数学者ド・プロニーの数表作成プロジェクトを介して、アダム・スミスの分業論につながっていたことの説明。

おそらく、最初は、数表作成が目的で、そのためのスチーム・コンピュータの原理を考えるなかで、バベッジの分業論も生まれたものと思われる。

つまり、コンピュータ研究が、現代資本主義を生んだ!

そして、マルクスへ…

ここから5月14日の資料

アダム・スミスとバベッジを繋ぐフランスの大対数表作成プロジェクト

バベッジの階差機関のオリジンは、彼の自伝 Passages of the life of a philosopher のChapterVに書かれている。

バベッジが、機械による数表の作成という計画を構想し始めたのが1812年か13年頃(p.42,上記グーグル・ブックスの書籍のページ数)。

図を引き始めたのが1820-1822。政府への提案が1823。(p.47)

On the Economy of Machinery and Manufactures の出版が1832。

バベッジは友人ハーシェルなどと、何度もフランスやヨーロッパ諸国を訪問しているらしいが、彼の自伝には面白いエピソードは詳しく書かれているが、それが何年のことか書かれていない。

しかし、On the Economy of Machinery and Manufactures の知的労働の分業で階差機関の話が書かれる前にフランスの大対数表作成プロジェクトのことが詳述され、それが知的労働でも分業が有効なことを示していると書かれ、また、その説明を受けて機械による計算が説明されていることから、

  1. 機械で計算を行うことを着想
  2. フランスの大対数表作成プロジェクトの詳細を知る。おそらくは並行して階差機関を設計
  3. この2の経験からバベッジの原理を発見

という経緯だと考えられる。

こう考えられる根拠となる部分が、

Chap XX. 「知的労働の分業について」

の「フランスの大対数表 (§241-246)」の部分。

背景:ド・プロニーの計算プロジェクト

以上のことを説明したのがバベッジの本の「フランスの大対数表 (§241-246)」。その内容は…

フランスの大対数表 (§241-243)

  1. 知的労働の分業が機械的操作(労働)の場合と同様に可能であり,それはどちらも時間の節約,時間の経済,に結びつく. (241)
  2. 歴史上最大規模に行われたフランスのド・プロニーの計算プロジェクトが,この考え方の現実性を説明している (242)
  3. その考え方の元はアダム・スミスの国富論にあることをド・プロニー自身が語っている。(243)
  4. ド・プロニーが考えた組織構造は三層構造による「知の分業」だった(244)
  5. 最下層の労働の量は大きいが、労働の価格は安くてすむ。
  6. 最上層の仕事は大変だが(extertions)、一度やれば済む。
  7. しかし、計算機(a calculating-engine) が作られて最下層を置き換える時には、数学的見直しが必要かもしれない。(245)

5はバベッジの原理の視線を連想させる。

3は、アダム・スミスの分業が知的労働に応用可能であることをド・プロニーを通して知ったことを示唆する。ただし、自伝に de Prony の名前がないことから、de Prony は知的分業の有効性の説明のためにだけ使ったという可能性はある。(アカデミックな学問では、こういう reservation を常に持たなくてはいけない!)

7は、バベッジが既に低賃金の機械的仕事をする労働者を、本当に機械で置き換えることを考えていたことを明瞭に示している。

人間の仕事が、知的仕事であっても機械に奪われる可能性があるという、このところ良く聞かれる意見の源は、この様に、すでに1810-30年代のイギリスまで遡れる。つまり、およそ2世紀前。

そして、バベッジの On the Economy of Machinery and Manufactures の四半世紀後、バベッジが住んだ同じロンドンの大英図書館で、バベッジの分業論などを手がかりにしつつ、この「機械的仕事をする部品の様に使われる労働者」の問題を、労働者側から見て、新しい経済学理論を綴っていたひとりの亡命ドイツ人(プロイセンのユダヤ人)がいた。

それがカール・マルクス。そして、彼が書いていた経済学理論こそが「資本論」。

次から、この話。